ニュースの概要
2026年の企業向けSDGs意識調査では、SDGsに前向きな企業の割合が52.6%となり、2年連続で低下しました。一方で、実際に何らかの取り組みを進めている企業の割合は過去最高を更新しています。この差は、企業が持続可能性を不要と考え始めたというより、理念への賛同を表明する段階から、費用や人員を伴う具体的な実行段階へ移った結果と見るべきでしょう。物価上昇、人手不足、賃金負担の増加が短期的な経営を圧迫するなか、SDGsを単独の社会貢献活動ではなく、本業の効率化や取引継続に結び付けられるかが問われています。
引用元: SDGsに関する企業の意識調査(2026年) 「SDGsに前向き」は52.6% 2年連続で低下 ~実践企業は過去最高も、インフレ、人手不足が下押し要因に(au Webポータル)
分析・見解
意識低下と実践過去最高がねじれる理由
今回の結果で最も重要なのは、「前向きな意識」と「実践」が同じ方向に動いていない点です。意識の低下だけを見ると、企業がSDGsから離れているように見えます。しかし実践企業は過去最高です。この組み合わせは、SDGsが掛け声の段階を終え、投資対効果や人員配置を厳しく評価される通常の経営課題になったことを示しています。言い換えれば、賛成する企業が減ったというより、抽象的な賛意を示す余力が縮小しました。そして成果を出せる領域に取り組みを絞る企業が増えた可能性があります。
物価高と人手不足が中小企業の実行を阻む
物価高は、再生可能エネルギー設備、省エネ改修、環境配慮型の原材料などの初期費用を押し上げます。人手不足は、担当者を置くこと自体を難しくします。排出量の集計、廃棄物の分類、従業員教育といった継続作業を後回しにする原因にもなります。特に中小企業では、売上や採用に直結しにくい施策ほど予算化しにくい傾向があります。経営者の意欲があっても実行が止まりやすい構造があるのです。ここで大企業と同じ種類の報告書や測定体制を求めれば、形式的な対応だけが増える恐れがあります。
排出量の概算や稼働データ活用で実務の入り口が広がった
一方、技術面では実務の入り口が以前より明確になりました。電力や燃料の請求書を基にした排出量の概算、製造設備の稼働データを使った異常検知、在庫と廃棄量を連動させた発注管理などは、環境対策とコスト削減を同時に進めやすい領域です。高額な設備を一度に導入するより、メーターの細分化、クラウド上の台帳、取引先からの原材料情報の収集を段階的に進める方が、投資回収の判断もしやすくなります。サプライチェーン全体の排出量(Scope3)の把握でも、最初から全品目を完璧に測るのではなく、購入額や排出量が大きい上位品目から始めることが現実的です。
数字集めを目的化せず、経営指標に組み込み格差に備える
ただし、数字を集めることが目的になってはいけません。例えば省エネ率を高めても、納期遅延や品質低下が起きれば経営上の成果とは言えません。重要なのは、温室効果ガス排出量、電力費、設備停止時間、原材料廃棄率、離職率を同じ経営会議で扱うことです。これらを一つの改善指標として見ると、SDGsは広報部門の仕事から、製造、購買、物流、人事をつなぐ業務設計へ変わります。今後は、取り組みの有無よりも、継続可能な仕組みを持つかどうかで企業間の差が広がります。取引先が排出量や人権への対応を求める場面では、未対応企業が突然大きな費用を負担する可能性があります。反対に、使用電力の削減や資材の標準化を早く進めた企業は、コスト耐性と提案力を同時に高められます。今回の意識低下は後退のサインであると同時に、SDGsを理念ではなく生産性の問題として再設計する好機です。企業が問うべきは「取り組むべきか」ではなく、「どの業務を変えれば、環境価値と利益を同時に積み上げられるか」です。
ビジネスへの影響
SDGs施策は三層に分けて優先順位をつける
意思決定者は、SDGs施策を一括した年間予算ではなく、三つの層に分けて管理すると判断しやすくなります。第一は、照明、空調、配送、包装など、半年から数年で費用削減を見込める領域です。第二は、取引継続や入札参加に必要な排出量、人権、調達情報の整備です。第三は、新素材や新サービスの開発で、短期の回収が難しくても将来の市場を確保する投資です。優先順位を混ぜないことが、物価高の局面での過剰反応を防ぎます。
月次記録と部門分担で人手不足でも継続する
実務では、まず主要拠点の電力、燃料、廃棄物、従業員数、購入品目を月次で記録し、金額と数量の両方を確認します。次に、排出量だけでなく、電力費、材料歩留まり、返品率、残業時間を同じ表に並べ、改善前後を比較します。担当者を一人に集中させず、購買は仕入れ情報、工場は使用量、経理は費用、人事は教育と定着を持つ分担にすると、人手不足でも継続しやすくなります。
取引先への要請は品目を絞り、実績を営業資産に変える
取引先への要請も、全社一律の高度な報告を求めるのではなく、まず対象品目と提出形式を限定するべきです。自社が得た省エネ効果や廃棄削減の実績を取引条件や商品説明に反映できれば、SDGs費用を守りの支出から営業上の資産へ変えられます。半年ごとに成果が出なかった施策を見直し、継続、縮小、停止を明確にすることも重要です。
