ニュースの概要
NECが自社サイトで、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた取り組みをまとめたページを公開している。新製品の発表ではなく、情報通信技術を手がける同社が、事業を通じて社会課題にどう関わるのかという考え方と活動の全体像を示すものだ。気候変動、安全・安心、公平な社会づくりなど複数の課題に、技術と事業をどう結びつけているかが読み取れる。SDGsの期限である2030年が近づくなか、国連の報告では多くのターゲットが予定どおりに進んでいない。大手企業が自社の貢献をどう語るかは、他社にも参考になる。本稿では個別の数字よりも、取り組みの示し方に注目して読み解く。
引用元: SDGs達成に貢献するNECの取り組み : 企業情報(NEC)
分析・見解
事業そのものを貢献の中心に置く、ICT企業の語り方
SDGsへの貢献を語る企業は、大きく二種類に分かれる。一つは、寄付や植樹、社員のボランティアなど、本業の外側で社会に貢献する型だ。もう一つは、売っている製品やサービスそのものが課題解決になるという型である。NECのようなICT企業は、後者を軸に据えやすい立場にある。顔認証や通信基盤、防災や医療の情報システムは、安全・安心や健康といった目標に直接つながるからだ。
本業型には強みがある。事業が伸びるほど貢献も広がるため、景気が悪くなっても活動を削られにくい。反対に弱みもある。売上の説明とSDGsの説明が混ざり、どこまでが本当に社会課題の解決なのか、外から見分けにくくなるのだ。
17の目標すべてを追わず、重点課題に絞る判断の意味
SDGsは17の目標と169のターゲットから成る。すべてに同じ力を注ぐ企業は、結局どれも浅くなる。多くの大手企業は、自社の強みと社会の要請が重なる分野を選び、そこに資源を集めている。この選び方を「マテリアリティ(=優先して取り組む重要課題)」と呼ぶ。
NECの公開情報にも、重点課題を設けて取り組みを整理する姿勢が見える。ここで大切なのは、何を選んだかより、何を選ばなかったかを説明できるかどうかだ。選ばなかった理由を語れる企業は、取り組みに筋が通っていると受け取られやすい。
国連報告が示す遅れと、企業の約束の重さ
国連の2023年版の進捗報告は、評価できるターゲットのうち、順調に進んでいるのは約15%にとどまると指摘した。期限の2030年まで残りわずかな中で、国や自治体だけでは差を埋めきれない。民間の技術と資金への期待は、年々大きくなっている。
その分、企業の約束は重く見られる。目標を掲げるだけでは足りず、途中経過を数字で示し、未達なら理由を述べる姿勢が問われる。同じ大手でも、取り組みを一枚のページにまとめて終わる企業と、年次の報告書で毎年更新し続ける企業とでは、信頼のたまり方が違ってくる。
技術の力を、地域や小さな企業にどう届けるか
ICT企業の貢献には、見えにくい弱点もある。高度な技術は、導入できる自治体や企業が限られがちだ。ここに目標10(不平等の是正)との緊張関係がある。便利な仕組みが、使える側とそうでない側の差を広げてしまうおそれもあるからだ。
今後の焦点は、技術の高さそのものよりも、使いやすさと費用の低さである。小さな町の防災や、人手不足の中小企業の業務改善に届いてはじめて、貢献は広がったと言える。
ビジネスへの影響
自社の本業のどこが目標につながるかを一枚に整理する
まず取り組むべきは、自社の製品やサービスが17の目標のどれに関わるかを、一枚の表にまとめることだ。ポイントは、関わりが強いものを二つか三つに絞ることである。例えば製造業なら、責任ある消費と生産、気候変動対策が候補になる。絞った理由を、営業担当者でも一分で説明できる状態にしておく。これができていれば、取引先からの問い合わせにも落ち着いて答えられる。社内の理解も欠かせない。現場の担当者が自分の仕事と社会課題の関係を語れると、提案の説得力が増す。
取引先から求められる情報に先回りして備える
大手企業は、取引先にも排出量の把握や人権への配慮を求めるようになっている。NECのような大手と取引する中堅・中小企業は、今後、調査票への回答を求められる場面が増えるだろう。電気使用量、廃棄物量、従業員の働き方に関する基本データを、今のうちに月次で集めておくと負担が小さい。回答の様式は取引先ごとに違う。共通の元データを持っておけば、毎回の作り直しを避けられる。サプライチェーン(=原材料から納品までの取引のつながり)全体の排出量の考え方は、当サイトの関連ページでも整理している。
成果を示す数字と、未達の説明をセットで用意する
情報発信では、良い話だけを並べないことが信頼につながる。削減量、研修を受けた人数、導入した地域の数など、数えられる成果を一つ決め、毎年同じ方法で記録する。目標に届かなかった年は、原因と次の手を短く書く。この習慣が、長く続く評価の土台になる。最初から大きな宣言をする必要はない。できる範囲を小さく約束し、守り続けるほうが、結果として説得力が高い。
