ニュースの概要
講談社Cステーションの連載「海と漁業とSDGs」第11回は、漁業が抱える利益と多様性の板挟みを取り上げている。少ない魚種を大量に獲れば、流通も加工も効率が上がり、利益は出しやすい。一方で、特定の魚に漁獲が偏ると資源が痛み、海の生き物の多様さも失われかねない。そこで、いろいろな魚を少しずつ扱う少量多品種という発想が注目される。ただし、手間もコストも増える。記事は、どちらか一方を選ぶのではなく、二つを組み合わせて海とビジネスの両方を守る道を探っている。本稿では、この論点を企業の調達や商品設計の側から読み解く。
引用元: 両立を求められる、利益と多様性。「大量少品種」と「少量多品種」で海とビジネスを守る|海と漁業とSDGs Vol.11(講談社Cステーション)
分析・見解
効率のよい大量少品種が、海に偏りを生む理由
大量少品種とは、少ない魚種を大量に獲り、大量に売るやり方である。サバやイワシのような魚は、まとめて獲れて、加工ラインにも流通網にも乗せやすい。工場や量販店から見れば、数が読めて規格がそろう魚ほど扱いやすい。
ただし、需要が一部の魚種に集中すると、その魚の資源だけが痛みやすい。日本でもサンマやスルメイカの不漁が続き、加工業者が原料確保に苦しんだ例がある。強みであった効率が、資源が減った途端に弱みへ変わる。ここが大量少品種の構造的な危うさである。
少量多品種は海に優しいが、手間とコストが重い
少量多品種は、いろいろな魚を少しずつ獲って売る方式だ。一つの魚種への負担が分散し、海の生き物の多様さも保ちやすい。気候変動で魚の分布が変わる時代には、獲れる魚が年ごとに入れ替わっても事業を続けやすい利点もある。
しかし、現場の負担は大きい。魚種ごとに選別し、さばき方も保存方法も変わる。小さな量では運賃も割高になる。消費者側にも、なじみのない魚を食べる習慣がまだ根づいていない。優しいやり方であっても、採算が合わなければ続かない。理想論で終わらせない仕組みが要る。
二者択一にせず、役割分担で両立させる考え方
注目したいのは、二つを対立させず役割分担で考える視点だ。主力の量は大量少品種で確保して収益の土台にする。そのうえで、低利用魚や地域限定の魚を少量多品種で加え、付加価値の高い商品として売る。たとえば、規格外で安く扱われてきた魚を、地元飲食店向けのセットや産地直送の定期便にする事例が各地で出ている。
ここで独自の視点を一つ挙げる。多様性は海のためだけでなく、事業者側の保険でもあるという点だ。主力魚種が不漁になっても、ほかの魚で売上の穴を埋められる。株式投資の分散と同じ発想で、品種を増やすことは経営のリスク管理になる。
制度と認証が、両立を後押しする鍵になる
個々の努力だけでは限界がある。漁獲枠の管理や、MSC認証のような持続可能な漁業の認証は、資源を守る事業者が報われる土台を作る。日本でも改正漁業法により資源管理が強化され、漁獲量の上限を科学的に決める流れが進んでいる。
こうした制度が整うと、買い手は安心して長期契約を結べ、漁業者も投資をしやすくなる。SDGsの目標14が掲げる海の豊かさを守る取り組みは、規制と市場の両面から実を結び始めている。
ビジネスへの影響
調達先と商品の品ぞろえを見直す
水産物を扱う食品メーカー、外食、小売は、主力魚種への依存度をまず数字で確かめたい。仕入れの半分以上が一、二種類の魚に集中していれば、不漁や価格高騰のリスクをそのまま抱えている。代替できる魚種を二、三種類あらかじめ試験導入し、レシピや加工条件を確認しておくと、いざという時の切り替えが速い。
低利用魚を使った限定メニューや季節商品は、話題づくりと原価の安定を同時に狙える。
認証と情報開示を、取引の強みに変える
投資家や取引先は、サプライチェーンの持続可能性を以前より厳しく見る。調達する水産物の産地、漁法、認証の有無を整理して開示すれば、企業報告書やESG評価でも説明材料になる。
小さな会社でも、まず自社の主要三品目だけ産地を追跡することから始められる。
小さく試し、数字で判断する
少量多品種は、いきなり全面展開すると手間で潰れやすい。一店舗、一商品群で三か月試し、廃棄率と粗利を比べるのが現実的だ。数字が出れば、社内の合意も取りやすい。
